20世紀ゲネラールプローベ

電影永年私財法を発布するべくゲネプロ中の備忘録。

ジャンプよりもサンデー派だったから……は言い訳にならないと思うのだけれど『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』感想

f:id:IllmaticXanadu:20210926144312j:image鬼滅の刃』という作品(原作漫画/TVアニメシリーズ)を微塵も摂取しておらず、主人公の名前も知らないし、その傍らのキャラクターたちの名前も知らないし、猪人間みたいな人は可愛いなあとは思いつつ、世界観も把握できていないし、主人公の妹さんが巻物?を口に咥え続けているのは"鬼"にならないためなんだ?なんてことは理解できたけれど、金髪の目がバキバキの人のことをどうして皆が揃いも揃って煉獄"さん"とさん付けで呼び讃えるのかもよく分からないまま、地上波で放送されていたのでようやく観ました。

煉獄さんという人が初登場時に駅弁を「美味い。美味い」と連呼しながら食うのはとても良かったです。
福田里香先生によるフード理論に結び付ければ「善人は美味しそうにフードを食べる」なわけですから、登場した瞬間より「この人は絶対にいい人だ!」と無意識に察知させるフード描写はとても良いなと思いました。
ぼくにとっては、煉獄さんという人は悪役の見た目に感じられて、こうして鑑賞するまでのしばらくの間は、彼が敵役でボスだとずっと勘違いしていたのです。バキバキの目が真っ赤なのも怖い。でもそれは「命を燃やしている」熱の象徴でもあるのだなと、観て理解できました。

また、主人公が敵?の赤い男の子に「逃げるな卑怯者!」と叫ぶシーンがあって、演出的には、さあ一番燃えるシーンですよ、感動のクライマックスですよと描いているのだけれど、いや敵の背後から攻撃するお前が卑怯者そのものじゃんかよと全俺がバシーンと突っ込んだのですが、その支離滅裂で精神分裂的な行動は可笑しかったです。
赤い男の子もかっこいい。その前に登場する黒い敵?はあまりにも好きになれず、ずっとうるさい。でも彼がラズベリージャムみたいなワーム?の先に顔だけちょこんと付いてまだまだうるさいのは面白かったです。

正確に言えば、あまりにも作風と自分の趣味の乖離に途方に暮れながら、かなり冒頭で列車に「無限」と書いてあったのがめちゃくちゃ可笑しかったのでそこは笑ったけれど、以降は「これはどうしたものかな……」と没入の出来なさに哀しい気分になり、ついには途中退席を繰り返しました。なので、ぼくはこの作品にとっては相応しい観客にはなれませんでした……。

あまりにも退屈で優先的にも考えられず、まあまた後で観ようとエンドロール前に退席しました(入浴した)。俺は罪人。そして巷で話題?のエンドロールもなんとか観ました。こういった力技は嫌いではないし、作り手たちの訴えたい気持ちも志しも理解はできるのだけれど、「さあ泣け!喪に服せ!」という磁場は、ベクトルが逆に向かってはいないか?とは感じました。にも関わらず、ソレでころっと泣いてしまう人が多いというのには、なんだか文化的な危機感すら覚えます。
いのちはねぇ、そう簡単に消費しちゃならんのですよ。

真太い線の作画は、特に荒唐無稽なアクション描写で迫力を増すけれど、まずもって絵(画ではなく)に惹かれず、興味の持続も維持出来ず……。展開は整理されていると感じます。三幕構成としても、特に終盤の展開こそが本作のエモポイントなのでしょう。しかし、人物の描写が「浅い」と「薄い」は微妙に異なります。「厚み」を感じられなかったのです(これは細田守の諸作品にも思うことがあります)。
声優さんたちの演技に罪は無いと思いますけれど、延々と状況説明や思考の流れを垂れ流されていく様子には「これはどうしたものかな……」と寒気を覚えて、もしも本作を映画館で鑑賞していれば、きっとぼくは眠るか席を立つくらいのけしからん行動に出てしまい兼ねないなと思いまして……恐らくはぼくの本作に対する態度が相当よろしくなかったと自責の念に駆られますけれど、あまりぼくには必要のない娯楽だとは思いました。これよりももっと面白い作品はいくらでもある、というのは、こういった感想で発するのはタブーかもしれませんが、作品それ自体に歩みを進めようとも思えなかったし、作品はそれ自体がぼくにとっては接近してはくれなかった、そんな風に感じました。

しっかりと原作に触れて、没入し切って鑑賞すれば、きっと最高のファンムービーに仕上がっているのでしょう。『シンエヴァ』をエヴァなんか一ミリも知らない人が観ても、きっと楽しめないでしょう……から……。いつか見直して、うわあ鬼滅最高!煉獄さーーーん!!泣( ; ; )と感動出来るまで精進します。鬼は外。

追記

これって『インセプション』じゃん、とは、既に多くの指摘があるので言及していません。とは言え即ち「夢から覚めるためには死ぬ」というテーマには、特に真新しさを感じられませんでした。だってこれって『インセプション』じゃん。