20世紀ゲネラールプローベ

電影永年私財法を発布するべくゲネプロ中の備忘録。

2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年映画ベストテン(外国映画・日本映画)&ワースト3

【外国映画ベストテン】 10位 カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-(2019/リチャード・スタンリー) 9位 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019/オリヴィア・ワイルド) 8位 透明人間(2020/リー・ワネル)7位 テネット(2020/クリストファー・ノー…

ずっと味があるのに何味が分からない、吐き出したいのに吐き出すことすら出来ない、呪いの映画『魔女見習いをさがして』

「意味がわかると怖い話」の意味が永遠に分からない感覚。今年最も気持ちの悪い、異様で、不可解で、歪んだ、特異な、謎の映画。未解決事件のような答えの無さが、本当にずっと怖い。 演出ではなく、この企画を通したプロデューサーや東映の異常な魅力。作劇…

君を見上げていたぼく、あなたを見上げていた私『タイタニック』

2012年にタイタニック沈没100周年で3Dリマスタリングされた『タイタニック3D』を劇場で観ていないので、およそ10年ぶりくらいに観た。めちゃくちゃ面白かったな。「タイタニックとかベタすぎるだろw」とアンチミーハー野郎に苦笑されるかもしれないけれど、…

こんな俺に恋をさせてくれて『ダーク・シャドウ』

『ダーク・シャドウ』のポスター・ヴィジュアルを初めて拝見した際に、ぼくの心は喜びに満ち溢れており(『バットマン・リターンズ』以来のミシェル・ファイファー出演!)、これはもしかしたら、久々に心置きなく「ティム・バートン映画」が観られるのではな…

BURN BABY BURN!『バットマン・リターンズ』

虐げられし魂のあがき。あるいは、怪物としてでしか生きられない者同士の嫉妬合戦。嗚呼、こんな暗黒で残酷で哀しい映画が他にあるものか……アルティメットオールタイムベスト大傑作!な『バットマン・リターンズ』について書こうと思う。ちなみに、ぼくが毎…

『ハリー・ポッター』シリーズ全作鑑賞備忘録

『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001/クリス・コロンバス) 19年ぶりに観た。確かに当時、劇場でワクワクしながら家族で観たことのノスタルジー補完はあるものの、もうずっと設定が楽しいから飽きないね。あと美術が総じて素晴らしい。 クリス・コロンバスっ…

回転するミラーボールに照らされて、読んだ弔辞が唄になったの(そんな研磨され尽くした幸福の完成度と、女優へのアンチ・オブセッション、そして演劇と葬儀とラストダンス)【東京にこにこちゃん『ラストダンスが悲しいのはイヤッッ』雑感】

「アレを観なかったことを絶対に後悔するから!!!!!」西荻窪駅のホームで、電車を待つ私に向かって肉汁サイドストーリーのるんげが叫んだ。 厳密に言えば、エクスクラメーションを5つも付けるほどの声量ではなかったものの、私にとって彼女のその言葉は…

排水口の出現、排気口の循環(または、ミナミの方から香水の音色が)【排気口『いそいでおさえる嘔気じゃない』雑感】

『香水』という曲が孕む危険性について、21世紀の日本人は果てしなく無防備だ。ここで唄われている失恋の痛みと安いノスタルジーには、鬱病の誘因となり得る要素が金太郎飴のように詰め込まれている。というより、そもそもノスタルジーやトラウマは、陰鬱の…

誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくい母性のすべてについて教えましょう、というメンドウな誘惑とメンドウな演劇【ヴァージン砧『孕み孕ませ産み産まれ』雑感】

筆者と主宰の香椎響子は、事もあろうに大親友(と言って過言ではないほどのフィーリングをゲットして、初対面でハイタッチ&ハグした仲なのだ。筆者は異性に対して、彼女以外を指して「オマエ」と読んだことはない。彼女とやっていない/やる予定がないことは…

無教訓・意味なし演劇の華麗なる意味を求めて三千里、「意味があること」への高度な反論としての『地蔵中毒の人力ネットフリックス vol.1~紅茶の美味しい粘液直飲み専門店』雑感(あるいは、ヴェルタースオリジナルおじさん補完計画)

地蔵中毒について書くべきことは何一つない。 ぼくが初めて地蔵中毒という異教徒との接近を果たし、驚嘆の旨をSNSに投稿するなり「ブログに感想書いてください!」という熱烈なラブコールを、一度ではなく幾度となく頂戴した。そういった声そのものは有難い…

最近観た映画の備忘録#7(スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャスな映画たち)

『ポンヌフの恋人』(1991年/レオス・カラックス) DVDにて。カラックスは『汚れた血』がオールタイムフェイヴァリットに大好きで、あとは『ホーリー・モーターズ』と『TOKYO!』の『メルド』も大好きで、実はアレックス三部作それ自体への思い入れはそこまで過…

最近観た映画の備忘録#6(なんとなく読み続けている読者の方は察すると思うのですが、わたしは女優について特に書くことが多く、それは美しい女優へのファナティックな幻想によるものと言うよりは、スクリーン一杯に映る女優の顔に対する、うっすらとしたフォビア(恐怖)があり、その美しさとグロテスクさに、魅惑されながらも脂汗を流してしまう、人生で最も興味を抱く存在だからなのかもしれません。そんなこんなで、今回も女優について書いている感想が多いです)

『スキャンダル』(2019年/ジェイ・ローチ) U-NEXT先行配信にて。観たかったのだけれど劇場鑑賞のタイミングを逃してしまったので配信にて初見。めちゃくちゃ面白かった。『オースティン・パワーズ』シリーズのジェイ・ローチが監督?と疑うほどに、ストレー…

最近観た映画の備忘録#5(緊急事態の解除は自粛期間の終焉ではない、ので、まだまだ自宅で映画を観まくるぞ!とか甘えた幻想を言ってられないくらいには映画館で新作が観たいです。大嫌いなNO MORE映画泥棒のCMを観て、妙な安心感とノスタルジーを感じてしまうのだろうか……だとしたら、それは嫌だな……)

『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018/大根仁) アマプラにて。個人的には『サニー 永遠の仲間たち』がオールタイムフェイヴァリットに大好きな人間なので、この日本版リメイクには拭い切れない違和感がどうしてもあった。とは言え、興味深く観た点も確かにあっ…

最近観た映画の備忘録#4(「人生は祭りだ、共に生きよう」と投げかけるほどの人生が、こうしてしばらく喪われつつある燃えるゴミのような世界で、燃えるゴミのような我々は、燃えるゴミのような映画を観ること、そして書くことによって、記録を記憶へと変換させ得て、つまり芸術に救われながら豊かさを噛み締めた、そのとき、わたし自身も、燃えるゴミから誰かが忘れ去った燃えない宝物へと変貌できる、そしてあなたに投げかけられる「人生は祭りだ、共に生きよう」)

『8 1/2』(1963年/フェデリコ・フェリーニ) U-NEXTにて。何度観てもオールタイムベストの大傑作。こうして改めて見返してみると、現在自分が好きな映画や監督たちとの親和性が極めて高く、あらゆる芸術の祖たる存在であることを意識する。たとえば、『オール…

最近観た映画の備忘録#3(第二次大戦の時もそうなんだが「こんな有事の際に芸術や文化なんてどうでもいい」と人間の愉しみを規制したがるアホがいたわけだ。たとえば老人ホームでおばあちゃんたちにメイクをしてあげただけで全員の健康状態が上がったという研究結果もある。絶対、人間はそういったアートやクリエイティビティによってしっかりと生かされている。ドイツで絵描きを蔑ろにしてヒトラーが誕生したことを忘れたとは言わせない。だからアートやエンターテインメントを蔑ろにするファックオフ野郎は早く死んじまえ。水でも飲んでろボケ。

『玉城ティナは夢想する』(2017年/山戸結希) YouTubeにて。バイオレンス映画。皮肉ではなく、これは暴力についての映画だ。「今そこにある美に対してカメラを向ける」ということの暴力性を山戸結希は認識しつつ、欲望のままに被写体を「傷付ける」。そして、…

最近観た映画の備忘録#2(「コ」と「ロ」と「ナ」を組み合わせると「君」になります、素敵やん)

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(2009年/庵野秀明、摩砂雪、鶴巻和哉) YouTube無料公開にて。ぼくはレイかアスカかと問われたら完全にアスカ派なのだけれど、それまでの旧エヴァの惣流アスカとは、ファンと言うことをためらわれるくらいに痛い子だった。そ…

最近観た映画の備忘録#1(緊急事態宣言には映画が合う、とか言っておかないとストレスフルで気が滅入るので、今こそ自宅映画鑑賞を崇めつつ、その記録を残しておこうと考えた、そんな趣旨による雑記)

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年/ J・ J・エイブラムス) U-NEXT先行配信にて。劇場鑑賞以来なので約4ヶ月ぶりに観た。当時は、ものすごくおもしろいものを観たという躁の感情と、ものすごくつまらないものを観たという鬱の感情にアン…

魔女の映画よりも『アンダー・ザ・シルバーレイク』を信じた者が辿り着いた『マウス・オブ・マッドネス』の「再映画化」を「演劇」で完遂する試み、を、ポスト演劇と銘打つことに一片の恥じらいも無い【盛夏火『ウィッチ・キャスティング』雑感】

※この文章は『ウィッチ・キャスティング』へのオマージュを込めて、なるべくパラノイアに、オカルティックに、陰謀論的に、ロマンティックな文体で執筆しています。666字の文字数を目指して書かれましたが、結果は15259字となります。長文のため、ご容赦くだ…

何故、白石麻衣を「黒石さん」として召喚せず、悲劇の似合う美女として撮らないのか『闇金ウシジマくん Part3』(2016年/山口雅俊)雑感

ファンと公言できるほどに『闇金ウシジマくん』シリーズが好きだ。原作漫画にせよテレビドラマにせよ、そして映画にせよ、どのエピソードも全くハズレが無いと断言できてしまうほどのクオリティが輝きを放っている。ウシジマくんは現代社会を生きる人々にと…

インターネット時代の子どもによる、ポストSNS時代の悪魔祓い(または、立ち続けた自分は悪なのか)【ヴァージン砧『ポップコーンの害について』雑感】

映画好きの端くれとして宣言してしまうが、ぼくは映画館でポップコーンを食べたことがない。厳密に言えば、シネコンの売店で購入したポップコーンを、シートに抱えて持ち込んだことがない。さらに厳密に言えば、同伴者がポップコーンを購入してシートに持ち…

ちいさな光が見えないあなたへ【コロナウイルスと現代日本芸術文化に関する、誰かのための間違ったアゲインスト】

新型コロナウイルスは正式名称をSevere acute respiratory syndrome coronavirus 2、略称をSARS-CoV-2と称する。このウイルスの形態を描いたコンピューターによる図は、上記の添付画像の通りである。不謹慎上等で言ってしまおう。コイツ、中々にかっこいい姿…

『排気口WS・裏口入学制度』提出テキスト

【まえがき】 https://twitter.com/haikikou02/status/1225694486052757512?s=21 https://twitter.com/haikikou02/status/1225693241380524034?s=21 上記の報を受けて、ぼくが執筆し、提出したテキストが、以下になります。 裏口入学制度、それ自体へのアゲ…

「面白そう」の映画として微笑み続ける映画史の天使たち『チャーリーズ・エンジェル』(2000年/マックG)雑感

『チャーリーズ・エンジェル』は、それまでの女性アクション映画とは一線を画していた。そもそも、従来の女性アクション映画は「なぜ女が闘うのか?」ということがテーマになっており、 復讐やら嫉妬やら、要するにそれらは男性視点で作られているモノがほと…

この映画はあなたの「敵」でもなければ「味方」でもない、単なる「馬鹿」なので、あなたはこの映画よって絶対に傷を付けられない、この映画にその「影響力」は無い『バイバイ、ヴァンプ』雑感

本作のツイッター公式アカウントが「この映画はそれぞれの愛に立ちはだかる壁を乗り越えることの強さを描いている」との弁をツリー形式で釈明した。結びには「そのテーマをエンターテインメントな作風で描いているため、一部の方に誤解や混乱を招いた事をお…

画は映画なのに芝居は演劇、それを迫害する思想はもう棄てる、面白いかどうかは別として『容疑者 室井慎次』(2005年/君塚良一)雑感

本作における最たる「観るべき理由」は、撮影監督を林淳一郎が務めているという点にある。林の撮影監督としての秀逸な仕事は、僕の偏見で列挙するなら、『リング』『回路』『カリスマ』『ニンゲン合格』『仄暗い水の底から』『クロユリ団地』といった、中田…

『メモリー』はあんなに情感込めて歌い上げてはならない曲なんだけど、もうそういう次元じゃないじゃん、そこも含めて愛してあげようよ『CATS』(2019年/トム・フーパー監督)雑感

21世紀の『死霊の盆踊り』!果てしなく悪夢的ヴィジョンで観客の感受性も脳髄も破壊する最高級のカルト映画爆誕!これは逆張りでも皮肉でも奇をてらって言っているのではない。自分はこの映画を徹底して賞賛する。なんてオリジナルなグロテスクだろう。未知…

菊地穂波氏との邂逅に関する(超訳としての)備忘録

前回、排気口新作公演『怖くなるまで待っていて』に関する雑感を、映画ファンであり、演劇と手を繋いだことさえない僕がパッパラピーに書き散らかしたのですが、あろうことか、排気口主宰の菊地穂波氏から「直接お会いしたい」、それに付帯して「文章に感動…

映画では「死んでいて」演劇では「生きている」こと【排気口『怖くなるまで待っていて』雑感】

受付をしていた制作の水野谷みきさんを見て、「わ、水野谷みきさんだ」と、当たり前に驚いてしまった。僕は下北沢まで彼女の唄を聴きに行ったことがあって、それを確かに記憶していたのだけれど、失礼ながら、排気口に所属していることを失念してしまってい…