20世紀ゲネラールプローベ

電影永年私財法を発布するべくゲネプロ中の備忘録。

魔女の映画よりも『アンダー・ザ・シルバーレイク』を信じた者が辿り着いた『マウス・オブ・マッドネス』の「再映画化」を「演劇」で完遂する試み、を、ポスト演劇と銘打つことに一片の恥じらいも無い【盛夏火『ウィッチ・キャスティング』雑感】

※この文章は『ウィッチ・キャスティング』へのオマージュを込めて、なるべくパラノイアに、オカルティックに、陰謀論的に、ロマンティックな文体で執筆しています。666字の文字数を目指して書かれましたが、結果は15259字となります。長文のため、ご容赦くだ…

何故、白石麻衣を「黒石さん」として召喚せず、悲劇の似合う美女として撮らないのか『闇金ウシジマくん Part3』(2016年/山口雅俊)雑感

ファンと公言できるほどに『闇金ウシジマくん』シリーズが好きだ。原作漫画にせよテレビドラマにせよ、そして映画にせよ、どのエピソードも全くハズレが無いと断言できてしまうほどのクオリティが輝きを放っている。ウシジマくんは現代社会を生きる人々にと…

インターネット時代の子どもによる、ポストSNS時代の悪魔祓い(または、立ち続けた自分は悪なのか)【ヴァージン砧『ポップコーンの害について』雑感】

映画好きの端くれとして宣言してしまうが、ぼくは映画館でポップコーンを食べたことがない。厳密に言えば、シネコンの売店で購入したポップコーンを、シートに抱えて持ち込んだことがない。さらに厳密に言えば、同伴者がポップコーンを購入してシートに持ち…

ちいさな光が見えないあなたへ【コロナウイルスと現代日本芸術文化に関する、誰かのための間違ったアゲインスト】

新型コロナウイルスは正式名称をSevere acute respiratory syndrome coronavirus 2、略称をSARS-CoV-2と称する。このウイルスの形態を描いたコンピューターによる図は、上記の添付画像の通りである。不謹慎上等で言ってしまおう。コイツ、中々にかっこいい姿…

『排気口WS・裏口入学制度』提出テキスト

【まえがき】 https://twitter.com/haikikou02/status/1225694486052757512?s=21 https://twitter.com/haikikou02/status/1225693241380524034?s=21 上記の報を受けて、ぼくが執筆し、提出したテキストが、以下になります。 裏口入学制度、それ自体へのアゲ…

「面白そう」の映画として微笑み続ける映画史の天使たち『チャーリーズ・エンジェル』(2000年/マックG)雑感

『チャーリーズ・エンジェル』は、それまでの女性アクション映画とは一線を画していた。そもそも、従来の女性アクション映画は「なぜ女が闘うのか?」ということがテーマになっており、 復讐やら嫉妬やら、要するにそれらは男性視点で作られているモノがほと…

この映画はあなたの「敵」でもなければ「味方」でもない、単なる「馬鹿」なので、あなたはこの映画よって絶対に傷を付けられない、この映画にその「影響力」は無い『バイバイ、ヴァンプ』雑感

本作のツイッター公式アカウントが「この映画はそれぞれの愛に立ちはだかる壁を乗り越えることの強さを描いている」との弁をツリー形式で釈明した。結びには「そのテーマをエンターテインメントな作風で描いているため、一部の方に誤解や混乱を招いた事をお…

画は映画なのに芝居は演劇、それを迫害する思想はもう棄てる、面白いかどうかは別として『容疑者 室井慎次』(2005年/君塚良一)雑感

本作における最たる「観るべき理由」は、撮影監督を林淳一郎が務めているという点にある。林の撮影監督としての秀逸な仕事は、僕の偏見で列挙するなら、『リング』『回路』『カリスマ』『ニンゲン合格』『仄暗い水の底から』『クロユリ団地』といった、中田…

『メモリー』はあんなに情感込めて歌い上げてはならない曲なんだけど、もうそういう次元じゃないじゃん、そこも含めて愛してあげようよ『CATS』(2019年/トム・フーパー監督)雑感

21世紀の『死霊の盆踊り』!果てしなく悪夢的ヴィジョンで観客の感受性も脳髄も破壊する最高級のカルト映画爆誕!これは逆張りでも皮肉でも奇をてらって言っているのではない。自分はこの映画を徹底して賞賛する。なんてオリジナルなグロテスクだろう。未知…

菊地穂波氏との邂逅に関する(超訳としての)備忘録

前回、排気口新作公演『怖くなるまで待っていて』に関する雑感を、映画ファンであり、演劇と手を繋いだことさえない僕がパッパラピーに書き散らかしたのですが、あろうことか、排気口主宰の菊地穂波氏から「直接お会いしたい」、それに付帯して「文章に感動…

映画では「死んでいて」演劇では「生きている」こと【排気口『怖くなるまで待っていて』雑感】

受付をしていた制作の水野谷みきさんを見て、「わ、水野谷みきさんだ」と、当たり前に驚いてしまった。僕は下北沢まで彼女の唄を聴きに行ったことがあって、それを確かに記憶していたのだけれど、失礼ながら、排気口に所属していることを失念してしまってい…

オルケスタとしての肉汁サイドストーリー、或いは、破られた最後のページ【肉汁サイドストーリー『さる沢』雑感②】

「アタシはチャラチャラした連中を見ると、はらわたが煮えくりかえるんだ。世の中はどう見たって、アタシのためにはない。あいつらだよ、あいつら。ちくしょう。殺してやる。てめぇらに逃げ道はねえぞ。アタシにもねえぞ」と、一人一人が思っている世界。厭…

オルケスタとしての肉汁サイドストーリー、或いは、破られた最後のページ【肉汁サイドストーリー『さる沢』雑感①】

※当エントリーは、筆者の友人である杉浦氏と彼の友人である蒼井紅茶氏が、肉汁サイドストーリーによる演劇『さる沢』の観劇に際して、観劇後の余韻と興奮によって自主制作ラジオとして収録された音源が、あまりにも滑舌が悪く、また長尺と化して自滅状況に陥…

2019年映画ワーストテン

1位 『屍人荘の殺人』(2019/木村ひさし) 堂々のワーストワン。単に映画としての酷さを極めていたからこの順位なのではない。映画としての酷さを極めつつ、最低映画でしか味わえない絶対的な高揚感と多幸感を兼ね備えて、僕らを犯しながら、僕らを射精へと導…

2019年外国映画ベストテン

10位 『名探偵ピカチュウ』(2019/ロブ・レターマン) 21世紀の『ロジャー・ラビット』。完璧にデフォルメされた可愛いキャラクターたちをフィルムノワールの世界に放り込むという試みだけで大成功している。デジタルカメラではなく、35mmフィルムカメラで撮ら…

2019年日本映画ベストテン

10位 『チワワちゃん』(2018/二宮健) 映画としての不格好さは明確で、決して誰もが認めるような完璧な傑作ではないのだけれど、すなわち、その構造としての欠陥や映画それ自体が嘆く不発感が、イコール「青春」と呼応している、ある意味メタ的な作品(この構…

名もなき映画、名もなき美しさ—世界一長い『TIME AFTER TIME』に関する評論

映画の深みとは、あくまで画面にあると言えます。僕らが映画を観る理由は、その画面=感触に触れたいという衝動だと言っても良いのです。つまらない映画は、物語とかメッセージという抽象的なものばかりに重きを置きがちで、大変にうるさく感じてしまいます…

『バイオハザードⅡ アポカリプス』 ジル・バレンタインに蹴られたい

血がドバドバと流れる映画を愛好しているものの、僕は如何せんホラーゲームが苦手だ。と言うより、超怖い。恐らく、ホラーゲームで最終的にクリアした作品は一本も無い。コナミ開発『サイレントヒル』もプレイしてみたけれど、コントローラーを投げ捨てて部…

『溺れるナイフ』 濡れたわたしを乾かすあなた

瞬時に劇場がどよめいた。 それは、立川シネマシティで上映中だった『溺れるナイフ』で、元毛皮のマリーズ・ボーカルにして現ドレスコーズ・ボーカル志磨遼平によってセルフ・リメイクされた『コミック・ジェネレイション』がエンドロールと共に流れ出した、…

非・映画愛宣言

"映画愛"という言葉が嫌いだ。 幸せそうな顔で「映画愛」とか「映画の記憶」とかいう奴を見ると、絞め殺してやりたくなる。 僕にとって、映画は常に暗い思い出の対象だ。能天気に愛せるようなものじゃなかった。映画館の暗闇は鬱屈を抱えてうずくまるものだ…