20世紀ゲネラールプローベ

電影永年私財法を発布するべくゲネプロ中の備忘録。

2020年映画ベストテン(外国映画・日本映画)&ワースト3

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【外国映画ベストテン】

f:id:IllmaticXanadu:20201231192844j:image10位 カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-(2019/リチャード・スタンリー)

f:id:IllmaticXanadu:20201231195633j:image9位 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019/オリヴィア・ワイルド)

f:id:IllmaticXanadu:20201231193013j:image8位 透明人間(2020/リー・ワネル)f:id:IllmaticXanadu:20201231195832j:image7位 テネット(2020/クリストファー・ノーラン)

f:id:IllmaticXanadu:20201231200210j:image6位 パラサイト 半地下の家族(2019/ポン・ジュノ)

f:id:IllmaticXanadu:20201231193139j:image5位 マンク(2020/デヴィッド・フィンチャー)

f:id:IllmaticXanadu:20201231195258j:image4位 アングスト 不安(1983/ジェラルド・カーグル)

f:id:IllmaticXanadu:20201231195235j:image3位 もう終わりにしよう。(2020/チャーリー・カウフマン)

f:id:IllmaticXanadu:20201231193816j:image2位 ブルータル・ジャスティス(2018/S・クレイグ・ザラー)

f:id:IllmaticXanadu:20201231200918j:plain1位 キャッツ(2019/トム・フーパー)

 

次点が多いのですが、『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』、『フォードVSフェラーリ』、『ボラット2』、『幸せへのまわり道』『スキャンダル』、『アンカット・ダイヤモンド』、『ドミノ 復讐の咆哮』などで、これらは日によってランクインするくらいには大好きです。

総評としては、優れた映画作品を選んだというよりも、今年を思い出した際に想起した思い出深い作品を選びました。つまり個人的には、今後の人生でも忘れられない映画、というものばかりです。忘れられないということは、愛しているということなので。
たとえば、『テネット』なんかは、これはハリウッド映画としてどうなんだろうというディメンションで下手っぴだなあと思う箇所もあるのですが、ノーランの映画少年のような無邪気っぷりには、思わずこちらも微笑み返したくなりました。まるで大金持ちの友達の自主映画を観ているような気持ちです。加えて、突然IMAXカメラで撮影されたショットになると、画面のフレームの大きさが変わり、通常ショットと画面サイズが異なるものを無理やりにでも繋げてしまう。こういった暴力性は極めて映画特有のものであって、フレームサイズが変わるたびに爆笑してしまいました。時間逆行世界で主人公が初めて目撃するのが「逆回転のカモメ」というマヌケさも、ノーランの頭を引っ叩きたくなるような可愛さがみなぎっており、こういうアホみたいな作品が年に一本くらいは観られるのが丁度いいバランスです。
『透明人間』はあらゆる意味で完成され切っていて本当に楽しく観ました。ホラー映画というジャンルに区別しても最高でしたし、ジャンルを差別的に限定しなくとも人間ドラマとしてしっかりと面白いので、そういった普遍的な価値を持った素晴らしい作品かと思います。
逆に『カラー・アウト・オブ・スペース』はラヴクラフト原作ということで思い切りジャンル映画ですが、多方面へのリスペクトが感じられる丁寧な作品で大変満足しました。理由も分からず狂っていくニコラス・ケイジ演じる父親の不条理劇として観ても面白かったです。

そして、『ブルータル・ジャスティス』は、そういったジャンル映画の枠を突き抜けた映画的としか言いようのない多幸感で溢れており、映画ボンクラはこの作品を武器に、シネフィルぶったエスプリ野郎たちを撃ち殺していいと思います。いつだってジャンル映画こそが最も偉いです。ジャンル映画をバカにするやつは死んでいい。
1位に選んだ『キャッツ』ですが、この映画が今年のベストワンだという確信は、鑑賞した際から全く揺らいでおりません。こんなにも真っ直ぐに純粋無垢に失敗してみせて、その失敗に無自覚であるがゆえに、ハリウッドメジャー作品であるにも関わらず「失敗されたまま」作品が全世界に輸出されたという事実がまず素晴らしいです。新型コロナウイルスが感染流行する以前に、世界には『キャッツ』が伝染していて、私は自信を持って、その感染者であると表明申し上げます。トム・ファッキン・フーパーが枕を濡らした涙の総量でサーフィンが出来ます。
また、私事ですが、恋人と付き合う前に初めてのデートで観た映画が『キャッツ』でした。爆笑する私の横で、「人間が猫になろうと頑張っているのに、どうしても人間にしか見えない」と彼女が大泣きしていたのを見て、あ、この人とお付き合いしようと改めて決心しました。そういう意味で思い出補完もされているかもしれません。惚気てごめんね。
ちなみに、別枠として「本当にありがとうございました賞」は『マンダロリアン』シーズン2です。

 

【日本映画ベストテン】

f:id:IllmaticXanadu:20201231193752j:image10位 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(2020/石立太一)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194105j:image9位 37セカンズ(2020/HIKARI)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194125j:image8位 眉村ちあきのすべて(仮)(2020/松浦本)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194144j:image7位 スパイの妻(2020/黒沢清)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194205j:image6位 眠る虫(2020/金子由里奈)

f:id:IllmaticXanadu:20201231195401j:image5位 初恋(2020/三池崇史)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194224j:image4位 魔女見習いをさがして(2020/佐藤順一、鎌谷悠)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194241j:image3位 VIDEOPHOBIA(2019/宮崎大祐)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194306j:image2位 のぼる小寺さん(2020/古厩智之)

f:id:IllmaticXanadu:20201231194329j:image1位 MOTHERS(2020/関麻衣子)

次点は特にありません。今年はあまり日本映画を鑑賞出来ておりませんので、かなり私の趣味に偏っているかとは思います。
今年は『のぼる小寺さん』が1位だと確信していたくらいには大好きな作品なのですが、逆に言えば、『のぼる小寺さん』より上位の作品に出会えることを願い続けていました。
結果、1位に選出した『MOTHERS』は、それにふさわしい力強い作品だと思っております。この作品は、日本映画大学の学生さんの卒業制作で、本年度のぴあフィルムフェスティバルに入選したものです。敢えて、ドキュメンタリーであるということ以外の一切の情報を入れずに鑑賞されることを強く推薦します。無名な作品であるがゆえに、めちゃくちゃ笑えましたし、めちゃくちゃ落ち込みましたし、映画的な奇跡の瞬間に幾度となく触れることが出来ました。地獄のような壮絶な映画であり、楽園のようなあたたかい人間のやさしさでみなぎっている作品です。監督の眼差しが本当に素晴らしいと思い、今年はこれを越えるような感情には出会っておらず、堂々の1位とさせていただきました。U-NEXTで配信されているようです。機会がありましたら是非。
そして、別枠として「本当にありがとうございました賞」は『呪怨:呪いの家』です。

 

【きらい3本】

1 バイバイ、ヴァンプ

2 アルプススタンドのはしの方

3 はちどり

『はちどり』は台湾映画のフリをした韓国映画で、私が欲求する韓国映画とはあまりにもかけ離れた優等生ぶりが肌に合わず、爆睡しました。エドワード・ヤン岩井俊二のモノマネ、ダサいので消えてほしいです。
『アルプススタンドのはしの方』は、「はしの方』のナードな人間たちが、物語の展開によって徐々に「中心」へと引き寄せられて、ヒエラルキーの上のほう=中心へと同化しようと誘導する作劇に嫌悪感を抱きました。こういった道徳の教科書のような作品を摂取するために、我々は映画館の暗闇には行っていないでしょう。『カメラを止めるな!』同様、同調圧力的な周囲の絶賛も辛いです。
『バイバイ、ヴァンプ』は映画ではなく、水洗トイレでさえ流し切ることのできないビチクソですので、本当に観なきゃ良かったと思っています。というか、こんなゴミが作られているという事実に絶句します。ちなみに、ブログに感想を書いたらプチバズりをしたのですが、「あなたはあらゆるジェンダーに差別は無いと仰っていますが、何様ですか?」などと言われ、私は本当にあらゆるジェンダー差別を抱いていないので、おっ死ねと思いました。

 

本来ならば、ベストテンすら選出するか迷ったのですが、これは毎年恒例のアソビなので取り急ぎ決行するに至りました。と言うのも、2020年は文字通りに未曾有の一年となり、例年に比べて圧倒的に劇場で映画を鑑賞する回数が減少したからです。

例年であれば、各作品ごとに簡素な感想を書き連ねるのですが、今年は総評のみとさせていただきます。映画館、あるいは「映画」そのものが大きな打撃を食らった今年は、ぼくのような映画ファンにとって、本当にナーバスな一年間でした。

ぼくは映画館が好きです。あの暗闇で、見ず知らずの人々と影を、光を見つめている時間がたまらなく好きです。ところが、ぼくらの居場所はファッキンウイルスに奪われ、楽しみにしていた新作は次々と公開延期の判断が下されていきました。

こういった状況は、実は初めてのことではありません。あの震災のときもそうでした。2011年3月10日、ぼくは茨城県の映画館で『英国王のスピーチ』を観ていて、それから2011年4月15日に『エンジェル・ウォーズ』を観るまで、映画館には行くことが出来ませんでした。

当たり前のように映画館へ通っていたぼくにとって、こういった習慣が一時的に抑制された状況は、たまらなく辛いことでした。映画を観て、映画について何かを書くという行為から遠く離れることを余儀なくされて、ぼくは本当に寂しかったです。

しかし、それは同時に、自分がどれほど映画が好きなのかということを気付かせてくれる機会でもありました。映画館が閉まっていても、配信で優れた作品が鑑賞できる時代にもなり、一憂している暇が無いことにも気付かされました。

どんな状況であれ、何かがぼくらから映画を奪うことは、絶対に出来ないのです。

最悪な時代に、最高に素晴らしい作品たちに出会えたことに最上の感謝を。

そして来年が、誰しもにとって素敵な年になりますように。

『シン・エヴァンゲリオン』と『シン・ウルトラマン』は来年のベストの何位かな……

それでは、映画が好きな皆さんも、映画なんて嫌いな皆さんも、逆境の時代で楽しくたくましく生きる全ての皆さん、本当に良いお年を!

 

【追記】

ぼくも拝聴しているポッドキャスト『底辺文化系トークラジオ「二十九歳までの地図」にて、ベスト10&ワースト3に関するメールを拝読いただきました。メールを送った時点から、少しだけ順位も変わっています。パーソナリティの皆さまから「10本に絞れよ!」「シネフィルぶったエスプリ野郎!」「惚気てんじゃねえ!」など有難いお言葉も頂戴しております。サイトでストリーミングでも、ポッドキャストアプリでダウンロードしてでも聴くことができます。是非お聴きくださいませ。

ちなみに、ぼくのメールが読まれるのは55:30〜1:08:46です!

【ウェブサイト】↓

Apple Podcast】↓

底辺文化系トークラジオ「二九歳までの地図」:Apple Podcast内の第三一六回 2020年・映画ベスト10&ワースト3(パート3/リスナー編)https://podcasts.apple.com/jp/podcast/%25E7%25AC%25AC%25E4%25B8%2589%25E4%25B8%2580%25E5%2585%25AD%25E5%259B%259E-2020%25E5%25B9%25B4-%25E6%2598%25A0%25E7%2594%25BB%25E3%2583%2599%25E3%2582%25B9%25E3%2583%258810-%25E3%2583%25AF%25E3%2583%25BC%25E3%2582%25B9%25E3%2583%25883-%25E3%2583%2591%25E3%2583%25BC%25E3%2583%25883-%25E3%2583%25AA%25E3%2582%25B9%25E3%2583%258A%25E3%2583%25BC%25E7%25B7%25A8/id1093724226?i=1000503942860&at=10l8JW&ct=hatenablogpodcasts.apple.com