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20世紀ゲネラールプローベ

電影永年私財法を発布するべくゲネプロ中の備忘録。

『バイオハザードⅡ アポカリプス』 ジル・バレンタインに蹴られたい

f:id:IllmaticXanadu:20161210233910j:image血がドバドバと流れる映画を愛好しているものの、僕は如何せんホラーゲームが苦手だ。と言うより、超怖い。恐らく、ホラーゲームで最終的にクリアした作品は一本も無い。コナミ開発『サイレントヒル』もプレイしてみたけれど、コントローラーを投げ捨てて部屋の隅で体育座りをしていた記憶しかない。和製ホラー『サイレン』は人間の顔のポリゴンが怖過ぎて心臓が2センチくらい縮小したので身体的な危険を察知して放棄した。必ず、旅の途中で離脱に至る情けねえ奴なのだ。

『バイオハザード』というテレビゲームの何がイヤだったかと言えば、プレイするにあたり、ヒジョーに頭を働かせなくてはならないことだった。ホラーやアクションというジャンルでありながら、同等に謎解きの側面があるワケで、僕のような偏差値の低い馬鹿には、それはそれは苦行でしかなかった。モチロン、ただでさえコワい遊戯。プレイ中は、ひょぇぇぇええええぇえぇぇああああ、と叫んでは目に涙を浮かべ、その涙を拭ってはまた絶叫の無限ループ。寿命が縮んでゆく感覚の恐ろしさを味わった。そもそも、好きな時に好きな場所でセーブ保存することも出来ず、それ故に連続的に伸びてゆくプレイ時間……インクリボンというアイテムはある意味で発明だけれど、その所為で散々な目に遭ったことは忘れられない。

さて、そんな『バイオハザード』の実写映画化第二弾が『バイオハザードⅡ アポカリプス』である。

f:id:IllmaticXanadu:20161209165643j:image

独断と偏見で申し上げますと、面白いとは感じない。全く。

脊髄反射的な快楽も、ここには無い。あるのは、どこまでも凡庸で、どこまでも不細工な映像の羅列だ。(ゾンビ登場時のMTV的なコマ落とし、ありゃ目を疑うダサさやぞ)

ただ一言、豪語しておきたい。

この映画のジル・バレンタインは素晴らしい。

そう、本作の魅力は、シエンナ・ギロリーさんが演じられたジル・バレンタインに尽きるのである。(え、ミラ・ジョヴォヴィッチは?と問うた貴方。俺はひとりの女しか愛せない)

f:id:IllmaticXanadu:20161209165909j:imageジル・バレンタインの顔が本編に映るファースト・カットは新聞記事だ。豪腕女性警官として活躍していたジルが、永らく停職していたことをアナウンスしている。

f:id:IllmaticXanadu:20161209165926j:imageしかし、突如として人間が人間を喰らうアポカリプス(黙示録、終末)な事態を見聞きし、ジルは復職を決意する。彼女がハイヒールを脱ぎ捨てブーツに履き替えるのは、その決意と覚悟の表明だ。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170016j:image背中姿だけでこの再現度。右脚の太ももに巻かれたベルトによるコントラストがアッパレ。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170125j:image出たああああジル・バレンタインだ!

f:id:IllmaticXanadu:20161209170210j:image冷静沈着な彼女は、老若男女誰よりも確実にゾンビ諸君を抹殺し、誰よりもクールで、誰よりも異彩な存在感をかもし出す。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170321j:imageピンと背筋が伸びているので、拳銃を構えただけで画になる。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170355j:imageそんなジル、アンブレラ社の悪い連中の所為で、絶賛ゾンビ大量発生中のラクーンシティに閉じ込められてしまう。これはゲートが閉められた際に、そのアンブレラのお偉いさんに向けられた怒りの視線。オンナを怒らすとどうなるか、オトコたちはまだ知らない。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170731j:image仲間が負傷したら、手早く看護もする。こういうところは女性らしい。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170824j:imageとりあえず教会に避難すると、ジルたちに銃を向ける馬鹿出現。しかし、クリ―チャーではない馬鹿に対して、もはやジルは拳銃を片手で簡素に構える。まるで馬鹿が弾を発射できない肝っ玉だと瞬時に判断したかのように。

f:id:IllmaticXanadu:20161209170931j:imageもはやフォーカスが合っていないときでさえも美しい。観客の眼球が画面右半分で停滞してしまうのは、他の役者たちの力不足ではない。単に、ジルが画面を支配しているだけである。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171308j:image美女はハンディカメラを通しても、どうしようもなく画になってしまうことの証明。ここで初めて、ジルは煙草を唇にくわえる。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171354j:image見よ!この火の点け方を!ジッポを拳銃に見立てて、そのまま煙草へと点火している。こんな粋な火の点け方をする女性が、果たして映画史には存在していただろうか。まるでキャスリン・ビグローが演出したみたいだ。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171451j:imageしかし、ジルに安堵の時間などない。教会内で不審な物音。暗闇が街を不気味に染める。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171511j:image闇の中でも機能する彼女の目は、闘争心でみなぎっている。こんな目で10秒ほど睨まれたら、たぶん絶命してしまう。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171532j:image地面に落ちている拳銃を拾うカットを、この監督はわざわざこういう構図で見せる。月光に照らされる、くねりとした肉体の曲線美。うーむ、いい仕事。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171549j:imageかくして、彼女は二丁拳銃をブッ放つ!みんな大好きジョン・ウー先生!(ちなみに横でグースカ寝てるのは、さっきのジルに銃向けた馬鹿)

f:id:IllmaticXanadu:20161209171612j:image長い舌をべろんべろんさせた気色悪いリッカーなるクリ―チャーに向けて、撃つ!撃つ!壁には構えた拳銃の影が描かれる。ここでも、二丁拳銃のイメージは消えない。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171651j:imageクリ―チャーのリッカ―くんの目線。クリーチャーでさえ、ジルをフルショットで捉えようと必死なのはこれ如何に。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171733j:imageリッカ―強し!ジル・バレンタイン、万事休すか!

f:id:IllmaticXanadu:20161209171753j:imageと心配していたら、盗んだバイクで走り出す何者かが乱暴に入場してくる。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171810j:imageジョヴォヴィでした。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171828j:imageんで、またもやジョヴォヴィも二丁マシンガン!どんだけジョン・ウー好きなんだよ!ちなみにこのバイオハザードシリーズで、ジョヴォヴィは毎回必ず二丁スタイルをやっている。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171844j:imageジョヴォヴィが合流したせいで、街がゾンビまみれなのに墓場を歩くことになる。1分後の展開がサルでも分かる親切設計。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171901j:image突然、ゾンビに噛まれたというジルの仲間に銃を向けるジョヴォヴィ。すかさず、ジルもジョヴォヴィへ銃を構える。かっちょいい構図。それにしても、この監督は、画面に拳銃を二丁出すことにガチでエクスタシーを感じているのだろうか。

f:id:IllmaticXanadu:20161209171920j:imageジョヴォヴィ顔こえーよ!

f:id:IllmaticXanadu:20161209171938j:imageポール・W・S・アンダーソンの嫁に負けじと、ジルも視線と銃口を逸らさない。そしてなんと、彼女は一歩前へと歩み出る……

f:id:IllmaticXanadu:20161209171954j:image見よ!自らの首筋に銃口を当てつつ一歩も引き下がらないという勇姿たるや!さすがのジョヴォヴィも銃を下ろす始末。惚れた。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172333j:image舞台は変わってバス車内で奇跡は起こる。これがオンナの煙草の吸い方か。煙草を挟んだ指から腕の筋肉を映し、極めつけはかすかに見えるワキをも捉えた構図に、どうしたってフェティズムを感じずにはいられない。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172354j:imageやばい……この映画に映るどの男性よりもかっこいい……

f:id:IllmaticXanadu:20161209172414j:imageでも煙草が消えると、時たま美女としての表情も見せる。ギャップ萌え。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172443j:imageほで、ここまで強い女性像として描かれてきたジルだが、目の前で仲間が射殺されるのを目撃してしまう。さすがに、表情に焦りと哀しみがにじみ出る。ジルらしくないが、だからこそ女性のか弱さも垣間見る。それでも、銃は手放さない

f:id:IllmaticXanadu:20161209172502j:image予想外の事態に、ジルはここで初めて戦いから離脱する。戦闘はジョヴォヴィに任せて退散。弱った彼女はクルマに引きこもる。ヒキのショットにおいても、太ももそれだけで存在証明してみせるオンナ、それがジル・バレンタイン。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172515j:imageさすがに仲間の死で落ち込む。彼女は車内でハンドルとゴッツンコ。ギャップ萌え(本稿二回目の使用)。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172539j:imageそこに、亡くなった仲間がリヴィングデッドとして奇襲!劇中、初めて目に涙を浮かべるジル。ゾンビ映画永遠のテーマであり、シチュエーションとの対峙。身震いしつつも、かつての仲間に向けて銃を構える。あとは引き金を引くのみ。これは通過儀礼だ。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172553j:imageかくして、リヴィングデッドの撃退に成功する。この通過儀礼を終えた彼女は、もう二度と涙を見せない。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172607j:imageいろいろあって、アンブレラ社勤務の博士から「娘を探してくれ」との依頼。物語はガキの捜索へとシフト。ジルは中学校に潜入。落ちているバスケットボールをパンパン撃ち抜いてフザけている余裕はない。

f:id:IllmaticXanadu:20161209172619j:image教室に潜入した際に、アッと驚嘆するショットがあった。フィックスされたキャメラが、画面右へと移動する彼女を追わず、パンをしない。かと言って、彼女がフレームアウトすることもない。だからこのような不細工なショットに成っている。ただ、これを編集で切らずに残しているのは、少なくとも映画自体が「少しでもジルを映していたい」と懇願しており、彼女が歓迎されているからだと思い至る。

f:id:IllmaticXanadu:20161210224916j:image教室でガキを見つける。早っ。時間経過と共に髪型は乱れ、じっとりと汗で濡れているのは、さっきの通過儀礼を完了したから。つまり、彼女は生まれ変わっている。儀式を乗り越えたからこそ、彼女はガキと遭遇を果たせた。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225007j:imageガキを連れて歩く。通過儀礼を果たしたジルは、ここで母性を試される。とりあえず、ガキを守るためだけのシークエンスが始まる。いいなあ、この娘になりたい。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225027j:image校内をゾンビワンちゃんことケルベロスがうろちょろしているので、二人で調理場に身を隠す。って『ジュラシック・パーク』か!

f:id:IllmaticXanadu:20161210225046j:imageシエンナ・ギロリーのアドリブだという動作。恐怖に怯えるガキと目を合わし、わたしがいるから平気よと安心させる。しかし、実はここで凶暴なケロべロスに怯えているのはジル本人でもある。母子が一体化し、同一化することにより恐怖を克服しようと試みるのだ。かくして、ジルは母性のテストを無事に通過する。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225059j:image地面に落ちた包丁を拾おうとする……ってこの構図、ちょっと待って! プレイバックプレイバック! さっきも教会で見たぞ! 落ちたものを身体をくねらせて拾わせるフェチなのか、この監督は……いや、いい仕事だよ。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225112j:image調理場にケルベロスが乱入してきたので、ジルはあらゆるガスコンロの栓を開く。彼女はガキの手を引っ張りながらマッチに火を点ける。そして……

f:id:IllmaticXanadu:20161210225123j:imageまあ、投げるでしょうね。真正面向きながら投げたかったんだろう。きっと中学二年生の頃から一度やってみたかったに違いない。ガキが「マジかよ……」な表情を浮かべているのも可愛い。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225137j:imageでも消えちゃいました。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225148j:imageええええええええええ……絶体絶命。嗚呼、ジルの活躍もここで終わってしまうのか……

f:id:IllmaticXanadu:20161210225205j:imageと心配していたら、ちゃんとジョヴォヴィが助けに来てくれた。あざす。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225218j:imageしかし、アンブレラ社の悪い連中に捕まっちまった。めっちゃヒキの画だけれど、両手を縛られたジルを見て感涙する。両胸が強調されたボディライン……このためのエロい衣装だったのか! 

f:id:IllmaticXanadu:20161210225244j:imageジョヴォヴィの協力もあって危機一髪、拘束から逃れる。これまた美麗な太ももの存在感。しゃんなろー!と怒れるジル。憎きオトコどもへ、撃つ!撃つ!

f:id:IllmaticXanadu:20161210225257j:image自分たちを閉じ込めた、アンブレラのお偉いさんにぐいーっと迫る。オンナの怨りが、映像を支配する。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225309j:imageもはやオトコに勝ち目はない。ジルはこのあと、この馬鹿をゾンビの皆様にディナーとしてご馳走する。怨念のソースを添えて。

f:id:IllmaticXanadu:20161210225401j:imageそんでもって、このドヤ顔である。かくして、ジル・バレンタインは勝利した!やっほう!

 

f:id:IllmaticXanadu:20161210225341j:image繰り返しになるが『バイオハザードⅡ アポカリプス』は面白い映画ではない。不細工なショットが不細工なカッティングで羅列された不細工な映像集だと、僕個人は感じる。

しかし、映画や物語には、そのようなホツレや未熟さを超越するキャラクターが存在している。このキャラクターこそが、「実力」を凌駕する「魅力」だ。

本作においてのソレは、シエンナ・ギロリー嬢が演じたジル・バレンタインである。

僕はこの「魅力」が堪らなく愛おしく、フルボッコにノックダウンさせられた身としては、もはや、とやかく「実力」の有無に関して御託を並べるのは不適切でしかない。

映画が文学や漫画と違うのは、そこに血肉を持った人間が「実在している」と思わせる瞬間があることだ。現実には存在していないキャラクターが「存在している」と目前で実感する時、観客は映画の醍醐味に浸る。そして、そのような「実存してみせること」こそが、俳優の仕事に他ならない。

ジル・バレンタインをありがとう。

ジル・バレンタインよ、ありがとう。

彼女主演のスピンオフ作品が撮られなくては、映画の21世紀は終われない。その際には、意地でもエキストラゾンビとして参加しますので、心置きなくミゾオチ辺りを蹴り上げてください!ジル様!!

 

 

f:id:IllmaticXanadu:20161210225456j:imageあ、ジョヴォヴィはジョヴォヴィで、スゲー楽しそうでした。